2012年1月30日月曜日

モニタリングと検証。用語の使い方その4。


今日はモニタリングと検証の違いについてお話します。 


多くの方が検証しているつもりでも、モニタリングにしかなっていない罠に陥っています。


 まずは、定義から入りましょう。


  • モニタリングとは

    各工程のハザードを管理するための手段が、意図した通りに動いているかを判定するために、観察や測定を行うこと。
  • 検証とは

    客観的証拠を提示することによって、要求事項(目的)を満たしていることを確認すること。 (ISO22000の語句の定義から抜粋したので、要求事項となっています。


次に例を考えてみましょう。


ある食品工場では、最近、最終製品の一般生菌数が多く検出されています。

工場長:最近、一般生菌数が多い状態が続いているが、どういうことかね?検証してみたか?
担当者:はい、全てのモニタリング記録を検証しましたが、逸脱しているものはありませんでした。
     原因がわかりません。

工場長:おいおい、それは検証ではなくて、モニタリングをやり直しただけだ。
担当者:え?

工場長:もっと広い範囲から証拠を集めなさい。
     「モニタリング結果は問題ありません。最終製品は問題あります」
     我々は正常なモニタリング結果を出すために仕事をしているんじゃなくて
     安全な製品を作るために仕事をしているんだ。
     どうして安全な商品が作れていないのか、その証拠を出すのが検証だ。

担当者:広い範囲からですか?分かりました。データを集めてきます。


 しばらくして・・・・

担当者:原因が分かりました!この工程のコンベアベルトの拭き取り検査結果を見ると、菌数が多
     くなっています。
     だから、コンベアベルトによる二次汚染が原因です!
     清掃を強化します!

工場長:ちょっと待て。まだ証拠が足りない。
     この工程は加熱前の工程だろう?加熱工程で殺菌されないのかな?
担当者:されているはずです。モニタリング結果でも逸脱がありませんでしたから。

工場長:加熱温度は70℃達温でモニタリングしていたはずだが?どうして70℃達温にしているの
     か、根拠はあるかな?
担当者:これまでに70℃達温で問題なかったので、そうしました。

工場長:70℃達温で、菌数をどれくらい減少させることができるか、わからないのか・・・。
     もしかして、70℃達温では殺菌しきれないくらいの微生物が、加熱前の食材に付いている
     のかもしれない。

担当者:っあ!原料の調達先が変わって、一般生菌数がこれくらいじゃないと納入できない、
     と言われたんです。
     でも、許容範囲内だったし安かったから、そこに決めました。

工場長:それは知っている。原料に含まれている微生物の数が多くなったのに加熱温度はそのま
     ま、特に洗浄工程を追加してもいない。
     それならば、コンベアベルトの菌数が多くなっても当然だろう。
     原因はそこではなくて、原料の菌数は変わったのに製造工程がそのままだった
     ことだろう。

担当者:そうですね。
工場長:わかったかな?今までやった全てが検証なんだ。
     こうやって、幅広く証拠を集めないと検証の結論は出ない。
     一つ一つの作業が問題なくても、組み合わさると課題が生まれることだってあるんだ。       
     個々のデータを集めるのは現場を見る必要がある。
     でも現場ばかりをみていては、安全な食品をつくると言う目的は達成されない。

担当者:木を見て森を見ず!ですね!


まとめです。

このように、「目的が達成されているか」を確認するのが検証なんです。各工程は問題なく動いていたとしても(モニタリング結果に異常がなくても)、工程を設計した前提が崩れてしまえば、モニタリング結果は無意味になります。 作業に焦点を当てる「モニタリング」と目的に焦点を当てる「検証」でした!


 あなたはどんな検証をしていますか?



次回は「妥当性確認と検証の違い」です。



メルマガ登録・解除
HACCPの実践術
毎週更新!HACCPを知らなければ生き残れない?!
   
powered by メルマガスタンドmelma! トップページへ


応援ありがとうございます。記事を書く励みになります!
人気ブログランキングへ

2012年1月23日月曜日

モニターとモニタリング。用語の使い方その3




こんにちわ、株式会社キュー・アンド・シーの阿部です。


今日はモニタリングとモニターの違いについて復習しましょう。(今日はあまり「定義」にこだわらないでくださいね。)


 なぜ、モニタリングとモニターの違いをハッキリさせる必要があるのでしょうか?

それはHACCPプランやOPRPで必要なのは、モニタリングであってモニターではないからです。 


あなたのHACCPプランはモニターになっていませんか?

防犯のためにカメラを設置する場合がありますが、あのカメラの役割はHACCPで言うところの何でしょうか? 防犯カメラはモニタリングと言えるでしょうか?


 答えは・・・・
「言えません」
です。


なぜでしょうか?



それは、例えそこで犯罪が起こっても、そのビデオを見直してみなければ、犯罪が起こったことがわからないからです。



「冷蔵庫に温度計が設置してあって、自動で温度が記録されるようになっている。」


この状態はモニターであって、モニタリングではありません。例え温度が逸脱していても、記録を見直さなければ、逸脱に気が付くことができないからです。

ですから、記録を見直す作業がモニタリングになります。 モニターとは、出来事をそのまま写しているだけ。 モニタリングとは、評価するために見ている状態。 とでも言えるでしょうか・・・・。


人間の場合は、基準から外れていれば知らせてくれるので、知らず知らずのうちにモニタリングになっています。でも機械の場合は、ちゃんと、「基準から外れたら教えてね」と設定しておかなければ、絶対に教えてはくれません。


ウチは温度記録を取っているから大丈夫! とは言えないのです。

誰(何)が基準から外れたことを知らせてくれるのですか? それが重要なのです。



メルマガ登録・解除
HACCPの実践術
毎週更新!HACCPを知らなければ生き残れない?!
   
powered by メルマガスタンドmelma! トップページへ


応援ありがとうございます。記事を書く励みになります!
人気ブログランキングへ

2012年1月16日月曜日

OLとCL、許容水準の違い。(用語の使い方その2)



株式会社 キュー・アンド・シーの阿部です。

 今回は、OL、CL、許容水準の違いについて復習しましょう。


OL:Operation Limit→運用限界
CL:Critical Limit→許容限界




OLとCLはHACCPプランで使う言葉です。CCPを管理する値として使います。

OLは運用限界なので、「この値を超えたら運用上良くないので、機械を調節して、正常な値を示すように調節する」ための値です。

一方CLは許容限界なので、「この値を超えると、不安全な製品ができているかもしれない」という値です。


崖っぷちを走っている車を考えてみましょう。ガードレールにぶつかっている状態がOLを超えた状態です。崖の下に落ちた状態がCLを超えた状態です。




では許容水準とは何でしょうか? 許容水準については、コーデックスでもISO22000でも定義されていません。

定義されていない語句は、辞書通りの意味を使うことになっています。と言うことは、許容できる水準、OK!と言える水準です。


では、何についての許容できる水準なのでしょうか? それは、最終製品において許容できるハザードの水準です。

一つ例を考えましょう。 お刺身を考えましょう。お刺身は生ものですから、当然微生物がいます。でも、私たちは食べていますよね?どのくらい微生物がいてもOKなのでしょうか?それは食中毒が起きない範囲で、と言うことになります。ですから、「食中毒菌がいないこと」これが許容水準になります。「微生物が検出されないこと」とはなりません。生ものには必ず微生物がいます。


どのレベル(大きさ)だったら最終製品に入っていても許容できるのか? それが、許容水準になります。


許容水準がしっかりしていないと、許容限界(CL)も決められないし、許容限界が決められなければ運用限界(OL)も決められません。


ここを間違えないでください。時々、許容限界ありきでHACCPプランを立ててしまう例がありますので。

次回はモニターとモニタリングについてです。 (ちなみに、モニターという言葉はどこにも書かれていませんので。。。)



メルマガ登録・解除
HACCPの実践術
毎週更新!HACCPを知らなければ生き残れない?!
   
powered by メルマガスタンドmelma! トップページへ


応援ありがとうございます。記事を書く励みになります!
人気ブログランキングへ

2012年1月10日火曜日

目標を達成する秘訣

目標設定 

明けましておめでとうございます。株式会社キュー・アンド・シーの阿部です。
 昨年は大きな出来事があり、いろいろ考えさせられる年でした。

 今年は、昨年考えたことを実行する一年にしたいと思います。 


さて、新しい年を迎えたので、年始め恒例の「目標設定」について考えてみたいと思います。


あなたも一年の始まりには「目標」を立てていますか?
あなたの部署ではどうでしょうか?
これは個人でも組織でも同じだと思います。


まず、目標がないと人は前に進めません。ゴールが決まっていないのにマラソンは走れません。どこに行けばよいかわかりませんから。

でも、どこに行けば良いかが決まっているだけで、そこに行こうと思いますか?

例えば、「あなたの目標はアメリカに行くことですよ」と言われたら、あなたはどう思いますか?
なんと答えますか?

 「アメリカに行ってどうするの?アメリカに行ったらどうなるの?」

アメリカに行って楽しいこと、自分の好きなこと、幸せなことがなければ、苦労してアメリカに行こうなんておもいませんよね?

「毎日日記をかく」「運動をする」。その先にあるものはなんですか?

衛生管理も同じです。 5Sを徹底したらどうなるの?HACCPを導入したらどうなるの?


クレームが少なくなる?確かにクレームが少なくなるのは良いことかもしれないけれど、クレームが少なくなっても、私にとって、何も良いことは無い。 会社の売上が上がる?会社の売上が上がっても、私の給料は変わらないし、誰にも褒められないし。売上が上がって得をするのは「営業」でしょ?製造現場の私たちは、製造量が増えて仕事が増えて忙しくなるだけでしょ?褒められもしない、認められもしない、でもクレームがあったら私たちの責任。そんなの、やってられないよね。


そもそも、なんのために私はこの製品を作っているの?この製品が売れるから?だから別に売れたって私には何の得にもならないの!売上が無くなれば、仕事がなくなる?だったら他の会社に行くよ。


イチローはなぜWBCであそこまで熱く戦っていたのでしょうか?
「背負っている物が、モチベーションを上げている」

日本の野球を世界一にするということが、彼をあそこまでかき立てていたのです。彼を動かしたのはお金ではありません。感情です。心です。


そうです。理念です。


どの会社にも、設立当時の熱い志があったはずです。それをもう一度見直してみてはいかがでしょうか?

P.F.ドラッカーの言葉を借りれば、「われわれの事業は何か、何であるべきか」です。


メルマガ登録・解除
HACCPの実践術
毎週更新!HACCPを知らなければ生き残れない?!
   
powered by メルマガスタンドmelma! トップページへ


応援ありがとうございます。記事を書く励みになります!

2011年12月26日月曜日

間違っていませんか?用語の使い方。

CCPとHACCPプランの違い



 (株)キュー・アンド・シーの阿部です。 

私が最初にHACCPについて勉強した頃、略語がたくさん出てきて 何がなんだかわからなくなった覚えがあります。 でも、周りの人たちは、その言葉を知っているのが当たり前の様な顔をしているので なかなか質問できませんでした。 でも実際にいろいろ話してみると、実はその単語の本当の定義を知らない 或いは、間違って使っている人がたくさんいました。 



あなたも、実はこれ、よくわかっていないんだよね~ってことありませんか?


 そこで!!


 今さら聞けない「これ何のこと?」を解説します。


 ------------------------------------------------------------------------

CCP=重要管理点

 ------------------------------------------------------------------------ 
今日はCCPとHACCPプランの違いについてです。


 この製品のCCPは?又はこの製品のHACCPプランは?と聞かれて あなたはどのように答えますか? 何回もこの言葉を繰り返しているうちに CCPとHACCPプランの違いが分からなくなります。


 過去に何度もこのブログでも「CCP」を使ってきました。



 さて、CCPって何でしょうか?


Critical control point:管理しなければならない重要な点→重要管理点

 ここまでは、知っているんです。わかってるんです。 


じゃあ、重要管理点って?管理しなければならない重要な点て?


 Codexの語句の定義を見てみましょう。



 「管理が可能で、かつ、危害要因を予防若しくは除去 又はそれを許容水準まで低減するために必須な段階」

 まだ、わかりにくいですね。 このようにも、言い換えることができます。



 危害分析で「管理しないと、最終製品に影響が出る」工程だ!と評価された段階。

 -----------------------------------------------------------------

HACCPプラン=計画

 -----------------------------------------------------------------



 そして、この重要管理点を管理するためのプラン(計画)に 「HACCPプラン」という名前が付いているんです。 計画なので、誰が何をどうやって~、が含まれています。



 だから 重要管理点(CCP)はどこですか? HACCPプランはどのようなものですか? と質問することになります。 管理しなければ最終製品に影響が出る工程はどこですか? それを管理する計画はどのようなものですか?って。





 正確には重要管理点とHACCPプランは違うものです。 でもHACCPプランの中に重要管理点が含まれている 重要管理点を管理する計画がHACCPプランなので 同じように使ってしまうことがあります。



 あなたはどうですか?




 次回はCLとOL、許容水準についてです。




メルマガ登録・解除
HACCPの実践術
毎週更新!HACCPを知らなければ生き残れない?!
   
powered by メルマガスタンドmelma! トップページへ


応援ありがとうございます。記事を書く励みになります!
人気ブログランキングへ