2011年3月2日水曜日

食中毒事件から、日本の食中毒事情を考える

2011年2月14日に保健所に報告され、その発生が公になりました、岩見沢市の学校給食食中毒事件。この事件は、日本における食中毒のとらえ方について問題提起しているように感じました。


この事件に限らず、問題が発生すると「作業者の衛生意識が低いから清掃が不十分」のように「作業者の衛生意識が低い」ことを原因の一つにする傾向があります。

でも本当にそれが原因なのでしょうか?


本当に日本は食中毒が少ないのか?


私は、「食中毒は起こらない」と無意識に思いこむような情報が日本中に流れているから、結果として衛生意識が低くなってしまうのではないかと思います。





日本では昨年20,000人ほどが食中毒にかかっていると厚生労働省は発表しています。この数字は他の先進国と比べてかなり少ない数字です。


アメリカでは以下のようなデータを発表しています。
  • 食中毒発生:76,000,000人(全人口3.14億人の約24%)
  • 病院で治療:325,000人
  • 死亡:5,000人


アメリカでは食中毒の発生実数ではなく、推定値を公表しています。これは食中毒になっても病院に行かない人などがいるため、実数を集計しても本当の発生状況はつかめないと判断しているからです。
「アメリカ」のデータが全てではありませんが、他国も日本より食中毒の発生率は高くなっています。そしてこの推定値は現実を表していると言われています。


隠れた食中毒患者


今回の食中毒事件については、新聞でも「医療機関から保健所への連絡が遅れていたこと、保健所へ連絡していない医療機関もあったこと」が報道されました。


要は食中毒患者がいても医療機関から保健所への連絡が徹底されていないのです。

であれば、医療機関から保健所へ連絡されて初めて食中毒として数えられる日本では、発表される食中毒数は実際とはかけ離れていることになります。本当は厚生労働省の発表より多くの食中毒が発生しているのではないでしょうか?

我々は「食中毒の少ない安全な国」という神話を信じ込んでいるような気がしてなりません。

神話を信じているのであれば、「何もしなくても、食中毒の起こらない安全な製品を製造できるから、HACCPは必要ない」そう考えても仕方がないでしょう。


繰り返される食中毒事件を防止するには


しかし、今回の事件を考えると原材料から最終製品までの取り扱いの問題、施設管理の問題、ヒトの作業内容を含めて、どこに食中毒を起こすような危害の要因があるのかを分析する必要があり、さらに現場への教育が課題だと思います。
そして、危害要因を分析することは、HACCPに他なりません。食品製造や大量調理業者、飲食店、食品流通業などフードチェーン全体にHACCPの効能をもっとアピールと共に知らせる必要があります。


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1 件のコメント:

  1. まず先に、日本の食の安全性は他国に例をみないほど安全なのは間違いありません。その理由は死亡者が皆無だからです。しかし、食中毒の発生がもっと多いのはご指摘の通りでしょう。

    ところで食中毒とは何を指して言いますか?
    ちょっとしたおなかこわしたものまでもいうのでしょうか?
    保健所で把握しているものは飲食店での集団発生事例がほとんどということです。それこそ衛生管理の話になります。医療機関からは報告の必要があるもの以外はほとんどないと思いますよ。家庭での発生はとても把握できないでしょう。

    医師の立場から述べると
    臨床医はあくまで来た患者の治療をするだけです。
    食中毒なのかどうかなのかということはたくさんの人が同時に押しかけない限りわかるはずがないですからね。
    そして、何故報告しないのか。理由は簡単ですよ。
    病原菌の特定なんてしないからです。
    ほとんどの患者は、整腸剤だけでも自然回復します。
    ノロウイルスなんてその典型でしょう。もしノロかどうかの検査なんてしてもわかったときには治っています。
    患者にとって病原の特定のメリットなんてありませんし、ノロについては保険適応すらありません。
    なので食中毒として届け出ること自体できません。

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