2011年8月1日月曜日

食品工場で正しく校正する方法

不確かさとは
前回は「トレーサビリティ体系図だけでは校正のトレーサビリティは証明されない」という話をしました。「不確かさの明示」が必要であると・・・・・。

今回は「不確かさ」とは何かについて考えてみたいと思います。
「不確かさの明示」とは、「値が含まれている可能性のある範囲を示したもの」と言い換えることができます。得られた値を統計的に処理して、値の信頼性を高めようとしているものです。

ところで、「不確かさ」を知って何か良いことはあるのか?どうして「不確かさ」が必要なのか?と疑問に思われたことでしょう。

何故不確かさが必要なのか?
それはHACCPの場合、「適合しているか不適合か、許容範囲を満たしているか」を判断するために必要なのです。

(以下は「不確かさの入門ガイド」を参考にしています。)
「不確かさ」とはどのように表すのか
20cm±1cm(信頼水準95%)
これはある棒の長さが19cm~21cmの間にあるということに対して95%自信が持てると言うことを示しています。

測定結果には「ブレ」が付きものです。ですから何回か測定を繰り返した結果からいろいろな不確かさを換算して「自分の測定結果はこの範囲にあります」と結論を出すのです。

HACCPでなぜ不確かさが必要なのかに戻ると
例えば、許容限界が75.0℃以上で測定結果が75.1℃だった。この機器の校正証明書を見ると、拡張不確かさ:0℃以上・・±0.2℃(k=2)とあった。するとごく簡単に考えて、他に測定値に影響を与えるような要因が全くなかったとしても、「75.1±0.2℃の範囲に約95%の確率で含まれている。75.1±0.1℃の範囲に約68%の確率で含まれている」と言うことができます。すると「機器が示した75.1℃が、合格であるか不合格であるかはグレー」という結果になってしまいます。



75.0℃を超えているかもしれないし、超えていないかもしれない。実は合格か不合格かわからない状態なのです。機器自体のスケールは許容限界の方は0.1℃で、機器も0.1℃なので問題ありません。でも校正の精度が±0.2℃では話になりません。

この校正証明書は「測定機の示している値を標準機と比較した結果の値はいろんな不確かさの要素があって±0.2℃の範囲に95%の確率で入っています。」と言っているのです。
精度、悪いですね。

誤差とは違います。
誤差とは真の値に対する差です。校正の場合は標準機の値が真の値でそれとの差が「誤差」となります。


「不確かさ」とは
どのような測定にも存在する疑わしさです。
その疑わしさはどこからくるのか、
 測定器
 測定対象
 測定プロセス
 校正時の不確かさ
 作業者の技能
 サンプリングの問題
 環境
などです。

このように考えていくと、HACCPで必要なのは「精度」ではなく、やはり「不確かさが明確になっていること」だと言えます。この値はどのくらい疑わしいのか。それが解っていれば測定結果を補正することができます。先ほどの例では不確かさが±0.2(k=2)と解っているので、測定結果が75.2℃以上であれば(他の要素は無視したとき)、許容限界をクリアしていると判断できます。校正精度が悪くてもなんとかなっています。

今回は専門用語が飛び交う、ちょっと深すぎる「不確かさ」についてしか考察できませんでした。次回は「除菌率90%のワナ」から微生物分野と化学分野での数字の扱い方を比較して、生物学的ハザード(危害)ではモニタリング機器をどの程度の精度(スケール)にすべきかについて考えてみたいと思います。



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